中国語では「把」構文、処置文と呼ばれる、英語では出てこなかった文法があります。
通常、中国語の語順は、主語+動詞+目的語と、英語と同じ語順になります。
「把構文」とは、本来動詞の後ろに置かれる目的語を、介詞 “把” +目的語として動詞の前に置く用法です。
主語 + 把 + 目的語 + 動詞
私は窓を開けましたという文章を通常表現するには、下記のようになります。この表現の場合、単に窓を開けたという事実を述べただけとなります。
続いて、「把構文」で表現してみましょう。”把” という介詞を目的語の前にくっつけて、介詞フレーズにして、動詞の前に持ってきます。
この場合、部屋が暑いとか空気が悪いというような状況に処置をするために、窓を開けて通気できる状態に変えたというニュアンスが含まれます。
主語 + 把 + 目的語(特定対象) + 動詞(処置) + 付加成分(影響・変化)
なお、この「把構文」は、日本語で「~を」と翻訳する目的語に全て使える訳ではなく、上記赤字部分で示した3つの制約があります。
これから、この3つの制約について詳しく解説していきます。
1. 目的語は特定できる対象か既知のものでなければいけない
①特定のもの
把構文の目的語は、限定語で修飾しているものしか使えません。数量詞は単に数を表すだけで、特定のものを示していないので使えません。
〇我吃了一个苹果。
〇我把那个苹果吃了。
“一个苹果”は一個のリンゴなので特定のものではありませんが、”那个苹果”はあのリンゴなので特定のものなので、把構文を使うことができます。
②話し手と聞き手にとって既知のもの
把構文の目的語は、特定できるものでなくても、話し手と聞き手が互いに既知の場合には、裸の目的語を使用することができます。
私は車を売りました。
2. 述語動詞は動作性のある他動詞でなければならない
把構文の動詞は、目的語に処置を加えるため、動作性のある他動詞でなければいけません。以下のような動詞では把構文は使えないので、注意が必要です。
①自動詞は使えない(目的語をとらないもの)
“哭”、”工作”、”旅行”のような自動詞は目的語がないので処置ができないので、把構文は使えません。
②能願動詞、心理動詞、感情動詞は使えない
“希望”、”知道”、”喜欢”などの動詞には、処置ができず結果も生じないので把構文は使えません。
③動作を表さない動詞
“是”、”有”、”像”(~のようである)などは、動作性がなく、処置ができないので把構文を使えません。
④方向を表す動詞
“来”、”去”、”上”などの動詞も物を扱わないので把構文を使えません。
3. 動詞の後に付加成分(影響・変化させる)が必要
処置を加えるので、動詞の後に影響・変化させる付加成分が必要となります。付加成分となり得るのは、以下の7つのパターンとなります。
①”了”・”着”
“着”の場合、命令表現に使われることが多いです。
②動詞の後に目的語
③重ね型(願望・要望・命令文)
④結果補語
⑤方向補語
⑥様態補語
⑦数量補語(時量補語・動量補語)
さて、ここまで説明すると、何となく全ての補語が「把構文」の付加成分に使えるのではというようにうろ覚えしてしまいます。
しかし、把構文と非常に相性が悪く、使えない補語があります。
これは、二つの文法の性質が大きく異なるから両立しないことによります。
- 把構文:確実性がある
- 可能補語:不確実性を表す(ある動作ができるか、できないか)
では、把構文を使った「できる」という表現を行いたい場合にはどうすればよいのでしょうか?この場合には、助動詞の”能”を”把”の前に持ってくるとよいそうです。
×他把这些东西吃得完。
〇你能把这些东西吃完。
「把構文」は、これらの3つの決まり事をまず覚えてから使えば、結構便利な表現だと言えます。
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